**北朝鮮擁護のために朝日新聞が。■1.朝日新聞の「頬被り」■この1月に派手に始まったNHKと朝日新聞の大喧嘩は、朝 日が頬被りしたまま、逃げ切りそうな気配である。 事の発端は、本年1月12日、朝日新聞が1面で「中川昭・ 安倍氏『内容偏り』指摘 NHK『慰安婦』番組改変」と、両 氏を名指しして、番組を改変させたと報道した記事であった。 別面の詳細記事では、匿名のNHK幹部が朝日新聞記者のイン タビューに答えて「圧力があった」と証言したと報道。翌日に はNHKの番組担当者が涙の告発会見を行い、「当時の上司か ら圧力があったと聞いた」と発言した。 ここまでは朝日のペースだったが、NHKは7時のニュース で10分以上にわたって「朝日の虚偽報道」と反撃。朝日のイ ンタビューに応じたNHK幹部が記者会見して、「記事は歪曲」 「事実とは逆の内容になっている」と言い切ったのである。涙 の会見をした番組担当者も、当時の上司から「圧力があったと 聞いた」というだけで、なんら証拠がある訳でもない。 NHKは朝日に18項目の公開質問状を送って、説明責任を 果たすよう要求したが、朝日はまともに答えず。また「圧力を かけた」と1面の見出しで糾弾された安倍晋三・内閣官房副長 官(当時)、中川昭一・経産相も「事実無根」と訂正・謝罪を 要求し、朝日は八方ふさがりに追い込まれた。 問題は単純な誤報事件に止まらない。問題となったNHKの 従軍慰安婦問題の番組とは、4年も前のものだ。それがなぜ今 頃蒸し返され、NHK幹部が会った政治家たちの中で、ことさ ら安倍・中川両氏だけを名指しで糾弾したのか。 この頃、両氏は北朝鮮への経済制裁を主張していた。くだん の朝日記者は、北朝鮮と共闘してこの側面攻撃として、この報 道で両氏を失脚させようと狙っていた、という疑惑が浮上して いる。今回はこの疑惑を追ってみよう。 ■2.「朝日の三ホンダ」■ この記者の名は本田雅和。「朝日の三ホンダ」の一人とも呼 ばれているそうだ。一人は朝日新聞の元スター記者・本多勝一。 日本軍が中国で「百人斬り競争をした」とでっち上げて山本七 平にコテンパンに論破された[a]。もう一人が、沖縄のサンゴ 礁を自分で傷つけた上で、環境破壊を戒める記事をでっちあげ た本田嘉郎である。 3人目の本田雅和は、一人目にあこがれて朝日新聞を志望し た。 私は「松井やより」と「本多勝一」にあこがれて朝日新 聞を志望したミーハージャリンコ(ジャーナリストのガキ。 卵たち)世代の一人だった。[1,49] 本田記者自身が書いた、松井やよりへの追悼文の一節である。 松井やよりは朝日新聞を退職した後に、慰安婦問題に関わり、 問題の「女性国際戦犯法廷」の準備に関わった人物である。 松井さんは何度も何度もしつこく電話をかけてきた。 「ちゃんと記事にしてね。きちんと報道してね。」[1,p50] ■3.「昭和天皇に極刑を」■ かくして平成12(2000)年12月8日から4日間にわたって 開かれた「女性国際戦犯法廷」とはどのようなものだったのか。 「法廷」の趣旨に賛同しないマスコミは閉め出された。産経新 聞は取材を断られ、NHKと朝日は取材した。 この「法廷」をとりあげたNHK教育テレビ番組「戦争をど う裁くか/問われる戦時性暴力」が次のように紹介されている。 その日、会場の九段会館には朝鮮の民族衣装を着た老女 たちが「昭和天皇に極刑を」のプラカードを押し立てて続 続と集合。最初にビデオが流される。「日本の責任者を処 罰しろ」と老女たちが日本大使館に向かって抗議するシー ン。最後は木に縛りつけられた昭和天皇とおぼしき男性に 朝鮮の民族衣装の女性がピストルを向ける画像で終わる。 それからシンポジウムが開かれる。日本の従軍慰安婦問 題が徹底的に批判されていれば、ユーゴの殺戮と強姦も起 こらなかったろう、とまさに一方的議論。そして裁判が始 まる。 被告人は今や地上にいない昭和天皇、旧日本軍人。弁護 士なし、弁護側証人なし。検察官は二人いたが、いずれも 北朝鮮の工作員だと指摘され、その後入国ビザが発給され ていない人物もいる。かくて裁判官が「天皇裕仁には性犯 罪と性奴隷強制の責任により有罪の判決を下す」というと、 場内は拍手のウェーブと興奮の坩堝(るつぼ)の中で歓喜 に包まれたそうだ。[2] これが安倍・中川両氏の「圧力によって改変された」後の番 組である。「改変」前はもっと凄かったのだろう。こういう番 組を公共放送が放映すること自体に問題があるのだが、それは さておき、本田記者の動きを追ってみよう。 ■4.北朝鮮の積極的な協力■ 本田記者は準備段階から、「法廷」に深く関与していた。開 催前に市民団体「ピースボート」と北朝鮮に入国。北朝鮮側が 「法廷」に積極的に協力する事を約束した、と自身の記事で書 いている。[3] この約束の結果として「法廷」の検事役として来日したのが、 黄虎男という人物。小泉首相の二度の訪朝の際に、金正日・総 書記の通訳をしたというから、相当の実力者だ。ある政府関係 者によれば「彼は朝鮮革命のプロパガンダを広める広義の意味 での工作員です。民衆法廷の後、また来日しようとしましたが、 政治活動など目的外行動を取るため政府に入国を拒否されてい ます」[3] 「法廷」が近づくと尊敬する松井やよりの期待に応え、本田記 者は大車輪の活躍を始める。11月から12月にかけて、朝日 には社説を含めて12本の記事が掲載された。毎日は4本、産 経は3本、読売はゼロであるから、朝日の突出ぶりが目立つ。 それも「『昭和天皇にも責任』指摘 政府は謝罪を 慰安婦 問題女性法廷閉幕」などと、いかにも主催者の主張をそのまま 紹介した報道である。たとえば産経の「法廷という名にも値し ない"暗黒裁判"に等しいもの」とは対照的だ。 ■5.「朝日記者の取材はまず結論ありきで」■ この時には、政治家の圧力などという事はまったく問題にも されなかった。それが4年も経った今頃になって急に問題にさ れたのである。本田記者の取材ぶりを辿ると、その理由が浮か び上がってくる。 「圧力があった」と朝日に報道された「匿名のNHK幹部」、 松尾・元放送総局長は記者会見でこう語った。 「自民党に呼ばれた」「圧力を感じた」という発言はして いない。特に圧力を感じたという部分だが、朝日の記者は 取材の最初から終わりまで何回もしつこく「政治的圧力を 感じさせたでしょう」と決めつけるような質問をしてきた。 そのつど繰り返し、政治的圧力は感じてないと答えたが、 記事は全く逆の内容になっている。・・・ 朝日記者の取材はまず結論ありきで、既にストーリーが できあがっているように感じた。記者は、「安倍、中川両 氏にあなたが会ったという事実や面談のやりとりはすべて 取材を終えている」と決めつけて強引にコメントを求めた。 しかし、昨日の朝日の記事を見ると、安倍、中川両氏への 取材は私への取材の翌日、今月十日とある。取材が終わっ ているかのような誤った印象を与えて、意図的に答えを引 き出そうとしたとしか思えない。[4] この会見の後に、松尾氏が本田記者に「取材の内容を確認し たい」と電話した際には、本田記者は「どこかでひそかに会い たい」「証言の内容について腹を割って調整しませんか」「擦 り合わせができるから」と繰り返したという。 ■6.「圧力をかけましたね」■ 安倍氏への「取材」は、その翌日の夜、こんな具合に行われ た。本田記者は約束もなく、いきなり安倍氏宅のインターホン を鳴らして、「NHK幹部に対して放映中止の圧力をかけまし たね」 安倍氏は風邪で寝込んでいたので、取材を断ると、さ らに続けた。「安倍さんは右翼と連携していましたね」 身に覚えのない右翼団体の名前を告げられ、失礼な人だ と思いました。記者を騙(かた)った人物と思い、インタ ーホンを切ったんです。すると、5分くらい延々とインタ ーホンを押し続ける。妻が怖がるので、再度私が応答する と、「安倍さんが放映中止を要請したと中川昭一さんも証 言しています」と言う。 これで私は嘘だとわかった。4年前、NHKとの面談に、 中川さんは同席していないから証言できるわけない。そう 言うと彼は黙り込みました。[3] 中川昭一氏への取材方法も同様である。 電話で突然、民衆法廷について次々と一方的に質問され たんです。4年前のことなので記憶は曖昧だと何度も言っ たんです。しかし、「放送前にNHKの方と会ったか」と か、NHKに抗議に行った右翼団体と関係があるかのよう な前提の質問をし、「証言がある」「告発の中で言及して いる人がいる」と、最初から結論ありきのような誘導的な 取材手法だったんです。[3] 取材を受けた3人ともが、本田記者は「最初から結論ありき」 と感じ、また他の二人はすでに圧力を認めているかのような嘘 をつく。 記事では中川氏がNHK幹部と会ったのは放映後であったの を「放映前」と書き、またNHKの方が予算説明に安倍氏を訪 問したのを「安倍氏が呼びつけた」とする。 これを「取材」と呼んだら、まっとうな新聞記者なら怒るだ ろう。 ■7.本田記者の狙いは■ なぜ本田記者はここまでして、安倍・中川両氏を攻撃したかっ たのだろう。ヒントは2つある。第一はなぜ番組放映から4年 も経っているこの時点で企てられたのか、という点。第二はN HK幹部は他の議員にも事前説明に行っているのに、なぜ両氏 だけを、それも一面のタイトルでことさらに名前を挙げてまで 狙い撃ちにしたのか、という点。 まずタイミングとしては、昨年12月8日、横田めぐみさん の遺骨が偽物と鑑定され、日本国内では北朝鮮を制裁すべしと いう世論が高まっていた時期である。そして、安倍氏と中川氏 は、その制裁論の先頭に立っていた人物なのである。 安倍氏は自民党拉致問題対策本部の本部長を務めており、ちょ うど本田記者の問題の記事が出た1月12日には、脱北者支援 などを盛り込んだ北朝鮮人権法案(仮称)づくりに着手して 「脱北者を支援することで、現政権の変化を助長する。レジー ム・チェンジ(体制転覆)も念頭に法律をつくらなければなら ない」と語ったと報道されている。 中川氏は「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するため に行動する議員連盟(拉致議連)」の会長である。この両氏こ そ北朝鮮にとっては、不倶戴天の敵であった。 本田記者の記事は、両氏を狙い撃ちにして、北朝鮮への制裁 を阻止しようという目的のもとにでっちあげられた、という以 上に説得的な解釈がありうるだろうか。 本田記者が勝手に北朝鮮への制裁を目指したのか、あるいは 北朝鮮からの差し金があったのか、は不明である。しかし、本 田記者が少なくとも3回は訪朝していることを考えれば、今回 の記事についても北朝鮮側となんらかの連携があったとしても 不思議ではない。 ■8.「信じ難いモラルの崩壊である」■ これだけの疑惑に対して朝日新聞は全く応えず、また本田記 者がインタビューした3氏の訂正・謝罪要求にも応えていない。 事件が風化し、忘れられていくのをじっと待っているようだ。 4年前に三菱自動車のリコール隠しが発覚した際、朝日は 「一体何を守るのか リコール隠し」と題する社説を掲げ、こ う述べた。 自動車メーカーが第一に守らなくてはならないのは、ユ ーザーの安全のはずだ。自明のことを、三菱自動車は踏み にじり、企業としての保身を優先させていた。・・・信じ 難いモラルの崩壊である。[5] この高邁なお説教を次のように言い換えたら、どうだろう。 新聞社が第一に守らなくてはならないのは、報道の真実 のはずだ。自明のことを、朝日新聞社は踏みにじり、企業 としての保身を優先させていた。・・・信じ難いモラルの 崩壊である。 ■9.尾崎事件と同様の「売国行為」!?■ いや、少なくとも三菱自動車が欠陥車を製造していたのは、 過失によるもので故意ではなかったはずだ。それに対して、本 田記者はある政治的意図を持って、故意に真実をねじ曲げた報 道をしていた、と疑われている。その場合、罪は三菱自動車よ りもはるかに重い。 戦前にも、元・朝日新聞記者の尾崎秀實が、ソ連のスパイ・ ゾルゲと連携して、日本の世論を誘導し、日中和平を妨害して、 日本を中国大陸での戦争に引きずり込んだ、という事件があっ た[b]。 新聞記者が、外国の利益のために、謀略記事で世論をねじ曲 げ、自国民が正当な選挙で選んだ国会議員を失脚させようとし たら、それは尾崎事件と同様の「売国行為」だろう。 朝日が北朝鮮のような独裁国家のプロパガンダ機関ならいざ 知らず、仮にも我が国のような自由民主主義社会における責任 ある報道機関であると言うなら、以上の疑惑に対して、きちん と説明責任を果たすべきである。文責:伊勢雅臣) |